齋藤哲学における存在論

Ontology in SAITO Philosophy

 

 


 関係情報存在論としての存在論

 

 存在とは何か

 従来の存在論では、存在はしばしば、

 ・実体としてあるもの

 ・個体として独立しているもの

 ・属性を持つもの

 ・時間と空間の中に位置するもの

 として捉えられてきた。

 しかし、齋藤哲学において存在は、孤立した実体ではない。

 存在とは、関係する情報の創発過程であり、他者・環境・時間・記憶・意味・宇宙との相互関係の中で成り立つものである。

 

 定義

 存在とは、関係する情報が相互に作用し、意味を生成しながら、固有のあり方として創発し続ける過程である。

 したがって、存在は固定された物ではなく、関係の中で生起し、変化し、深まり、意味を持つ動的な生成である。

 

 以下では、齋藤哲学における存在論を、

 原理(存在論の根本をなす理論

 公理(存在論の前提)

 定理(公理から導かれる命題)

 命題(真偽の判断の対象となる文章

 テーゼ(存在論全体を要約する主張)

 として整理する。

 

 第一原理 関係性の原理

 存在公理1

 存在は孤立して成立しない

 存在するものは、常に何らかの関係の中にある。

 人間は、身体・記憶・他者・社会・自然・宇宙との関係の中で、はじめて自己として成り立つ。

 

 定理1

 存在とは、関係の結節である。

 ここでいう関係とは、単なる外的なつながりではない。

 関係とは、存在そのものを成り立たせる情報的条件である。

 

 第二原理 情報性の原理

 存在公理2

 存在は情報を含む。

 存在するものは、単に「ある」のではなく、他の存在に対して何らかの差異・影響・意味をもたらす。

 この差異と意味の働きこそが、関係情報である。

 

 定理2

 存在とは、関係情報の現れである。

 人間の言葉、表情、記憶、沈黙、身体の反応、生活歴、願い、苦しみ、希望は、すべて関係情報として理解されうる。

 

 第三原理 創発の原理

 存在公理3

 存在は固定された状態ではなく、創発し続ける過程である。

 存在は、既に完成されたものとしてあるのではない。

 存在は、関係の変化、情報の交換、経験の蓄積、意味の再構成を通して、新たなあり方へと開かれている。

 

 定理3

 存在は未完であるがゆえに創発する。

 未完であることは欠陥ではない。

 未完であるからこそ、存在は変化し、深まり、可能性へ向かう。

 

 第四原理 個別性の原理

 存在公理4

 すべての存在は、関係の中で唯一無二である。

 同じ人間、同じ人生、同じ記憶、同じ苦しみ、同じ希望は存在しない。

 それぞれの存在は、固有の関係情報の組み合わせとして成り立つ。

 

 定理4

 自己とは、関係情報の唯一無二の個体化である。

 自己は、孤立した内面ではない。

 自己とは、身体・記憶・他者・社会・自然・歴史・宇宙との関係の中で創発する、かけがえのない存在である。

 

 第五原理 相互生成の原理

 存在公理5

 存在は互いに生成し合う。

 人間は他者とかかわることで変化する。

 他者もまた、そのかかわりの中で変化する。

 したがって、存在とは一方的に与えられたものではなく、相互生成の過程である。

 

 定理5

 かかわりとは、存在を生成する営みである。

 介護福祉実践におけるかかわりは、単なる作業や対応ではない。

 それは、ご本人と介護福祉職が相互に関係情報を交換し、新たな意味と可能性を創発していく営みである。

 

 第六原理 尊厳の原理

 尊厳公理

 人間は、関係の中で唯一無二に存在しているがゆえに、尊厳を有する。

 尊厳は、制度や能力によって後から与えられるものではない。

 人間は、すでに固有の関係情報存在として、この世界に一回限りに現れている。

 定理6

 尊厳とは、存在の唯一無二性に対する畏敬である。

 人間を尊ぶとは、個々人を役割・能力・診断名・状態・行動だけで判断しないことである。

 個々人の人生、記憶、苦しみ、願い、沈黙、可能性を含めて、かけがえのない存在として受けとめることである。

 

 第七原理 意味生成の原理

 存在公理7

 存在は意味を生成する。

 人間の言葉、行動、沈黙、反復、拒否、願い、涙、笑顔は、単なる現象ではない。

 それらは、個々人の人生と関係の中で意味を持つ。

 

 定理7

 意味は、関係の中で生まれる。

 介護福祉実践において、一見理解しがたい言動も、ご本人の生活歴、関係、記憶、苦しみ、希望の中で見直されるとき、新たな意味を帯びる。

 ここに、肯定的理解の根拠がある。

 

 第八原理 宇宙的関係性の原理

 宇宙存在公理

 存在は、宇宙的関係情報の中で成り立つ。

 人間は、社会の中にだけ存在するのではない。

 身体は自然とつながり、生命は地球環境とつながり、地球は宇宙とつながっている。

 したがって、人間存在は、宇宙的関係情報の一つの創発として理解されうる。

 

 定理8

 人間の自己・魂・尊厳・ケアは、宇宙的関係情報の創発として理解される。

 ここでいう宇宙的視座は、物理学理論を直接に証明・適用するものではなく、存在が孤立した実体ではなく、宇宙規模の関係情報の中で成り立つことを考えるための哲学的・存在論的モデルである。

 

 介護福祉への帰結

  介護福祉実践とは、単に身体機能や生活動作を支援する営みではない。

 それは、ご本人を関係情報存在として理解し、ご本人の尊厳、生き方、記憶、願い、苦しみ、希望、可能性を支える実践である。

 介護福祉職は、ご本人を孤立した個々の実体としてではなく、人生史・家族・地域・社会・自然・宇宙との関係の中で生きている存在として受けとめる。

 したがって、ケアとは、存在を支える実践である。

 

 ケア存在定理

 ケアとは、他者の存在が関係の中で意味と可能性を創発し続けられるように支える実践である。

 

 存在の構造モデル

 関係→情報→意味→創発→自己→尊厳→ケア

 

 存在の螺旋モデル

 出会い→関係→理解→意味生成→肯定的理解→尊厳の確認→新たな自己創発

 

 七つの存在論テーゼ

 テーゼ1

 存在は孤立ではなく関係である。

 

 テーゼ2

 存在は物ではなく情報である。

 

 テーゼ3

 存在は固定ではなく創発である。

 

 テーゼ4

 自己は関係情報の唯一無二の個体化である。

 

 テーゼ5

 尊厳は存在の唯一無二性に根ざす。

 

 テーゼ6

 ケアは存在を支える実践である。

 

 テーゼ7

 人間存在は宇宙的関係情報の創発として理解される。

  

 存在論公式

 関係性 × 情報性 × 創発性 = 存在

 ※この公式は、数学的・物理学的な等式ではなく、齋藤哲学における存在の構造を象徴的に示す哲学的表現である。

 

 最高命題(存在論)

 存在とは、宇宙・生命・人間・自己が、関係する情報の中で意味を生成しながら創発し続ける過程である。

 

 齋藤哲学体系の全体モデル

 存在論 → 宇宙論 → 哲学的人類学(人間論)→ ケア倫理 → 善悪論 → 希望論 → 救済論 → 真理論

 

 本ページの接続焦点

 存在論 → 宇宙論 → 哲学的人類学(人間論)→ ケア倫理 → 善悪論 → 希望論 → 救済論 → 真理論

 存在論は、齋藤哲学の最も基礎に位置し、存在を関係情報の創発過程として明らかにする。

 

 齋藤哲学体系における存在論の位置

 存在が関係情報として成り立つからこそ、善悪は極性として意味を持ち、希望は未完性から生まれ、救済は関係の回復として理解され、真理は関係的必然として捉えられる。

 

 存在論から真理論への終局的展開モデル

 存在論→善悪論→希望論→救済論→真理論

 

 哲学史的には

 Alfred North Whitehead の過程哲学

 Martin Buber の関係哲学

 Gabriel Marcel の実存的希望論

 Carol Gilligan / Joan C. Tronto のケア倫理

 などと対話可能な位置にあるが、介護福祉実践から出発し、ご本人の尊厳と関係情報存在論へ到達している点で独自である。

 

 まとめ

 齋藤哲学における存在論とは、存在を孤立した実体としてではなく、関係する情報の創発過程として理解する哲学である。

 人間は、単なる個体ではない。

 人間は、身体・記憶・他者・社会・自然・宇宙との関係の中で、唯一無二の自己として創発し続ける存在である。

 したがって、介護福祉実践とは、ご本人の存在を支える営みであり、その尊厳・生き方・希望・意味生成を、関係の中で支えるケアである。

 ※すべての存在は関係の中で成り立ち、その関係情報が意味を生成し、創発し続けることによって、自己・尊厳・ケア・真理へと開かれていく。

 

 

 齋藤哲学における存在論の要点

1.関係存在

  存在は孤立した実体ではなく、相互関係によって成立する。

 2.情報の個体化

  人間とは、宇宙的関係の中から生じた唯一無二の存在形態である。

 3.創発

  すべての存在は、関係から新たな意味と秩序を生み出す。

 4.開放性

  存在は常に未完であり、可能性へ開かれている。

齋藤代彦
Shirohiko Saito
 
 
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キーワード
齋藤哲学、SAITO Philosophy、関係情報存在論、Relational Informational Ontology、介護福祉哲学、Philosophy of Care Welfare、ご本人の尊厳、生き方の自由度、共存共栄、肯定的理解
 

著者について

齋藤代彦は、介護福祉職としての実践経験と、介護福祉士を養成する専門学校・短期大学・大学における24年間の教員経験を基盤に、関係情報存在論を中核とする「齋藤哲学」を体系化し、関係情報存在論としての介護福祉哲学を公開・研究している独立研究者です。

1958年(昭和33年)生まれ。
社会福祉士・介護福祉士。
満66歳となった年度末に教員生活から引退しました。

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